クリーンランゲージについて その2

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    15-Jul-2015

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  • クリーンランゲージについて その2 2015-02-18 西尾泰和
  • 前回のあらすじ 最初の一歩として 「クリーンな一人書き出し法」を学んだ (他人や口頭対話の扱いは習得に時間が掛かる) 「問題ではなく理想」の原則と、 もっとも重要な2つの質問と、 開始と終了のための2つの質問を学んだ。 2
  • 今回のスライドの目的 最初の一歩を習得した人のために 次の一歩を解説する。 キーワード選択のもう一つの原則と 基本5質問の残りの2つを学ぶ。 3
  • クリーンな一人書き出し法の目的 あなたは、今語り得る以上のことを知っている クリーンな質問によって、これらの言語化を促す 4
  • 公共言語へのとらわれ 「他人と共通だと思う意味体系」(公共言語) で話すことが重要だと考えがち。しかし、 言語化されたばかりのものは公共言語ではなく 個人的なメタファー☆などの形を取っている。 5
  • 個人的なメタファーの例 「この一人書き出し法のプロセスのことを、 以前は卓球のラリーのように思っていたけど、 それは間違いで音楽のようにやるべきだった。」 説明なしでは通じにくいが 本人にとってはしっくりくる表現 これを許容し、むしろ積極的に求める 6
  • もう一つの原則 前回、キーワードの選択の指針として 「問題ではなく願望」の原則を説明した。 今回、もう一つ原則が加わる。 身体感覚や個人的なメタファーは 「まだ言語化されていないもの」の近くにある そこで… 7
  • 「抽象概念より個人的感覚」の原則 抽象概念は公共言語の可能性が高い。それよりも • 個人的感覚(見える、聞こえる、感じる…) • 個人的行動(する、進む、登る…) • 個人的メタファー(ラリー、音楽、階段…) を優先的に選び、注意を向けていく。 8
  • 例題 「スムーズな話の流れを見出して 読者がわかりやすい説明を作りたい」 という言葉が出たとします。 どこかをキーワードとして切り出して、 「Xはどのような種類のXですか?」 と質問してください。 9 次のページには○が4つ、×が4つ書かれています。 階段の先では、ジェスチャーや口調、そこまでの会話の流れなどを含めて判断します。 そのため、絶対的な正解も不正解もありませんが 最初の一歩として、ここではあえて○×にしています。
  • キーワード選択の例 • ◎その「見出す」はどのような種類の?(感覚) • ○その「作る」はどのような種類の?(行動) • ○その「スムーズ」はどのような種類の? (この文章だけでは感覚か抽象かがわからない。話すときにジェスチャーが出るとか、 声が強くなるなどの「感覚を伴ってそうな兆候」があれば◎に昇格する) • ○その「話の流れ」はどのような種類の? (メタファーではあるけど一般的な使われ方なので抽象か個人的メタファーか区別がつかない。 ジェスチャーや視線などで物理的な川の流れのようなものを「見て」いそうなら◎に昇格する) • ×その「読者」はどのような種類の? (有形物ではあるが少し抽象的。これが具体的になることは有益ではあるが、優先度は低い) • ××その「説明」はどのような種類の? (これは抽象概念だし、どのような説明かがわからないから相手は悩んでいるのでしょう。) 10
  • ここまでのまとめ 抽象概念や公共言語ではなく、 個人的な感覚・行動・メタファーへの注目が 「言語化されていないものを言語化する」 ために重要な役割を果たす これを踏まえて、クリーンの基本5質問の 残りの3つのうちの2つを見てみよう。 11
  • 場所の質問 「そのXはどこにありますか?」 「そのXはどのあたりにありますか?」 基本5質問のうち2つが場所に関する質問 (詳細な場所を特定するために2回場所を聞く) 感覚やメタファーの場所を聞くことで 相手は自分の体との空間的関係を考え より鮮明に思い浮かべるようになる 12
  • 場所がない? 「場所のないものもあるじゃないか。 先に『場所はありますか?』と聞くべきでは」 私も以前そう思っていた。その時の私は 抽象概念と個人的感覚を区別していなかった。 抽象概念は「場所はない」と答えられがちだが、 感覚やメタファーは「強いて言えば…」と 答えが出てくることも多い。 13
  • 場所の質問と回答の例 • その「見出す」はどこにありますか? →あえて言うなら目だな。でも外を見ているん じゃなくて脳の内側を見ているような。 • その「作る」はどこにありますか? →手かなとも思ったけど、どちらかと言うと 腹の奥で醸成されてそれが手から出てくる • その「スムーズ」はどこにありますか? →腕の表面でするするとした感触。 なめらかな筒の中を自分が進んでいくような感じ。 • (悪い例)その「説明」はどこにありますか? →あえて言うなら頭の中。 14
  • スムーズに回答が出ない? 場所の質問に対してスムーズに回答が出ない? それは問題ではない。 • 「場所はない」と感じている →「場所はない」と答えても良い。 「今はまだ場所はないんだな」と解釈する • 「場所なんて考えたことなかったな」 「どこにあるかな…すぐに出てこないぞ」 →場所がありそうな気がしているなら どこなのか特定されるのをゆっくり待つ* 15 *ゆっくり待った結果「どこにあるのかわからない」という結論になることもあるが 「そうか、今はまだ場所がわからないんだな」と解釈する。
  • いいよどみは良い兆候 ユージン・ジェンドリンらはカウンセリングの 録音テープを元に、成功と失敗を分けるものが 何かを調査した。 結果:成功したものでは共通してクライアントが いいよどんでいる。 解釈:言語化できて いないものにアクセス しているとき、それが 「いいよどみ」として 現れている 16
  • 僕の個人的メタファー 以前は卓球のラリーのように、スピーディに やりとりを繰り返すのが正しいと思っていた。 いいよどんで言葉が止まるのは、 卓球で球を打ち返しそこねるのと同じような 「失敗」だと思っていた。 それは間違いだった。音楽のようにやるべきだ。 鍵盤をひたすら叩き続けてもうるさいだけ。 鍵盤を叩いていない間合い、 音と音の間の空白の時間が大事なんだ。 17
  • まとめ • 二歩目として以下のことを解説した: • 公共言語へのとらわれが言語化を妨げる • 抽象概念より個人的な感覚・行動・メタファー にフォーカスするという原則 • 基本5質問の2つが「場所の質問」 18
  • まとめ • 階段の先の以下のことは解説されてない: • 基本5質問の最後の一つ「何のようですか?」 • 「シンボルの特定は名前と場所と特徴」 個人的感覚をどこまで掘り下るかの目安について • シンボル間の関係、時間的変化 • 行き止まりの対処:バックトラック、リキャップ • 対人・口頭での対話の際に重要になる要素: ジェスチャーへの注目、対話の場のセットアップ、 リピートバック 19
  • おまけ 前回のスライドで使われたキーワード 「最初の一歩」「階段」「階段の先」は 場所が特定されたメタファーの例になっている。 この書き出し法で実際に出てきた、このメタファーに関連する発言: 手法についてだけ説明すると読むのはスムーズだが、使うところで壁に当たる。 理論から説明すると最初から壁に当たる。階段を細かくして少しずつ上がるべき。 階段を上がりきることを目指すのではなく、 最初の一歩を上がることに注力すべき。 で、その最初の一歩はどこにありますか? 最初の一歩は目の前、足元にある。 足元だけ見ていると視線が下向きになってしまう。 見ないとつまずく。だから、まず目線を上げて先の方を見て、 それから足元を見て一歩上がって、 それからまた先の方を見て、近づいたことを確認するのがよい 20
  • 次回予告 第3話をいつ、どういう内容で出すかは未定です 反響やフィードバックを見て考える予定。 ここまでのやり方だと「手当たり次第に掘り下げ ていたら話がどんどんそれていく」という症状が 出ると思うので「どこまで掘り下げるのか」と 「戻る方法」を説明するのが第3話、関係を扱う のが第4話かな。 21
  • 参考文献 • Clean LanguageはDavid Groveによって 心的外傷のケアのために開発された。 Resolving Traumatic Memories: Metaphors and Symbols in Psychotherapy • ここで解説しているのはそれをベースにした Penny Tompkins と James Lawleyによる “Symbolic Modelling” Metaphors in Mind: Transformation Through Symbolic Modelling • 「公的言語」という表現は、Ludwig J. J. Wittgensteinだが P.16で紹介したEugene T. Gendlinの著作を介して知った。 体験過程と意味の創造 22